公認心理師・臨床心理士は食えない?心理職の需要はこれからどうなるのかを解説

働き方

質問箱にて、公認心理師を志す高校生の方から質問をいただきました。

質問者さんは「これから心理職になって食べて行けるのか」を心配しているようです。

それゆえに「需要」を気にしておられると思いますが、実は「需要があれば食べて行ける」という簡単な話ではないように私は思います。

今回は、

・心理職の需要は増えるのか?

・今後、心理職が食べていくには?

の2点から、ご質問に対する私なりの見解をお話ししようと思います。

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公認心理師・臨床心理士など心理職の需要はどうなる?

そもそも心理職の「需要」とは何か

1.心理的なケアを求める人は増えている

「心理職」には2つの側面があると考えています。

1つは「心理的なケアを提供する専門家」という側面です。この側面では心理職の需要は増えていると言えます。

下の表1を見てください。

表1 精神疾患による患者数 厚生労働省「みんなのメンタルヘルス」より引用

この表1は厚生労働省のHPに掲載されている精神疾患の患者数の推移です。これを見ると精神疾患の患者数は年々増加していることが分かります。

シンプルな話をすれば、精神的な問題を抱えた方が増えている訳ですから、それをケアする専門家の需要も当然高まると言えます。

また、表2、表3を見ると、スクールカウンセラーが活躍する学校でも「不登校」や「いじめ」など、対応しなければならない問題は増えています。

表2 不登校児童生徒数の推移 文部科学省「令和元年度
児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要
」より引用
表3 いじめの認知件数の推移 文部科学省「令和元年度
児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要
」より引用

ゆえに、「心理的なケアを提供する専門家」自体は求められていると言えるでしょう。

2.民間施設の経営者目線では需要が低い

心理職の2つ目の側面は「労働者」という点。

現代の日本は資本主義社会です。経営者は労働者を使って「お金を生む」ことを目指します。

お金がないと人の確保もできません。良いサービスや商品も作れず、会社や施設の維持さえ困難になりますから、この経営者の思考は当然だと言えます。

ところが、多くの場合、心理職という労働者はお金を生みません

医療現場では医師や看護師などによるケアは保険点数を獲得できるため、病院に「お金を生む」ことができます。

私立の学校では、進学実績が広告効果を持ちますから、指導力のある先生方は「お金を生む」と言えるでしょう。

しかしながら、心理職がやっていることは「お金を生まない」ことばかりです。

・1人に50分も時間をかける

・1回5000円などの定額しか稼げない(より良い稼ぎは望めない)

・保険点数も取れない(カウンセリングは保険適用外なので)

なかなかのコスパの悪さです。

そのため、経営者目線では心理職という労働者を雇用するメリットが低く、需要もやや低めになります。

佐藤セイ
佐藤セイ

公認心理師のカウンセリングが保険点数を取れるようになれば、医療現場での状況は変わっていくかもですが…。

現時点では、ほんのちょびっとだけ保険点数が取れる部分がある…という程度。

カウンセラーじゃなくてテスターとしてなら需要はあるけど、「やっぱりカウンセリングがしたい!」という方が多いのではないかと思います。むむむ。

3.公的なサービスでは予算が少ない

「経営」という視点を外して、人々に必要なサービスを届けるのが「公的サービス」「行政」です。心理職にはぴったりですね。

少し検索してみると、児童相談所や児童養護施設、市役所や女性相談所などの公的機関から、たくさんの求人が出ているのが分かります。

求人数を見れば「お、需要あるじゃーん」と思えるのですが、問題なのはその時給です。

その多くが1500円程度、安ければ1000円以下と、かなり厳しい条件となっています。

公的サービスには予算がつかないのです。

佐藤セイ
佐藤セイ

時給1500円で1日8時間、月に20日働いたとすると月給は24万円。

非常勤ならボーナスなどはないので、年収は288万。

ここから社会保険料(健康保険や年金など)が引かれるとして、手取りが20万前後。

高校生だとイメージしづらいかもしれませんが、生活するにはやや心もとない額です。

例えば、

・家賃:6万円

・食費:3万円

・通信費:1万円

・水道光熱費:1万円

・交通費:1万円

・日用品や化粧品:5000円

・医療費:5000円

・交際費:1万円

・被服費:1万円

・教育費(研修費や書籍費):1万円

・奨学金返済:2万円

だと、あっという間に計18万円になってしまいます。

佐藤セイ
佐藤セイ

もちろん、「安い家に住む」とか「食費を節約する」とか、「服や化粧品は買わない!」とか「奨学金は借りない」など、工夫してもっと安く抑えること自体は可能です!

スクールカウンセラー(時給5000円前後)や処遇カウンセラー(時給3000円前後)など、高時給の仕事を獲得できると、生活と心にゆとりが生まれます。

しかし、そういう仕事は他の人も狙っている訳で…。

地域によって需要は変わる

公認心理師や臨床心理士の大学院が数多く集まる場所では、心理職の供給が多いため、需要は必然的に低くなります。

例えば、京都には臨床心理士指定大学院だけでも

・京都大学

・京都教育大学

・京都橘大学

・京都文教大学

・佛教大学

・龍谷大学

…などなど、たくさんの大学院があり、その学生が非常勤先を求めて日夜闘っているわけですから、スクールカウンセラーなどの競争率は熾烈を極めます。

しかし、大学院の少ない地域では需要は高くなります。

例えば、同じ関西でも和歌山には臨床心理士指定大学院がありませんから、自然と需要は高くなります。

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今後、公認心理師や臨床心理士が「食えない」を克服するには?

これまでご紹介してきた通り、心理職のニーズは高いものの、資本主義に乗り切れないために「食えない」という事態に陥っていると考えられます。

一体、どうすれば「食える」状態になれるのでしょうか?

1つのスキルを極める

公認心理師や臨床心理士という資格を保有した時点では、「一般的な人よりも心理の知識を浅く広く知っている人」に過ぎません。

そこから専門家になるには、もっと1つのスキルを極める方が良いように思います。

「餃子でもハンバーグでも焼き魚でも作ります」という食堂よりも、「ハンバーグ一筋30年」というレストランの方が魅力的に感じませんか?

「公認心理師なので何でも任せてください」よりも「私は発達障害の専門性がめちゃくちゃ高いです!」と言えた方が療育では強い。

「これだけは任せてくれ!」というものが1つあると、自分を売り込みやすくなります。

※もちろん、基礎がしっかりしていることは大前提です!

TwitterやYouTubeでも「〇〇専門カウンセラー」ってちょこちょこ見かけると思います。その方たちはこのマーケット戦略で集客している訳です。

自分をしっかり売り込めるようになると

・より良い労働条件の仕事に就ける

・独立したときに集客がしやすい

などのメリットがあります。

新しい顧客を見つける

公認心理師や臨床心理士って「知る人ぞ知る」みたいな資格になっていると思います。

つまり、知らない人は本当に知らない。

この知らない人たちにいかに知ってもらって「あ、自分も心理職の人とつながりたいな」「仕事をお願いしたいな」と思ってもらえるかが、今後の自分自身の需要を高めるために結構大事です。

私自身は心理職として、

・スクールカウンセラーとして「悩んでいる人たち」にカウンセリングしてお金を貰う

・心理系ライターとして「悩んでいない人たち」からも仕事を受注してお金を貰う

の両輪で働いています。

Twitterはもちろん、YouTubeやインスタ、clubhouseやブログなど「心理職×〇〇」で発信活動をしている方も、そういう戦略で「食える」を模索しているのではないかと思います。

そして、その発信から「相談してみたいな」という人も発掘できる広告にも近い。

私自身は「佐藤セイ」でのカウンセリングはしていないのですが、こうやって質問箱に相談が来るのも、私のTwitter発信が広告宣伝になっていたんだと思います。

質問箱を何らかの形で有料化できるとすれば、それも私の収入源になるでしょう。

しないけど…。

まぁ、これは新しい手法のようですが、河合隼雄先生が専門家だけでなく市民の方に向けての本を出版していたように、そして今は信田さよ子先生や東畑開人先生も、たくさんの人が読み物として楽しめる本を書いているように、ずーっと為されてきたことを、本以外の媒体でより手軽に行っている…という感じかと思います。

佐藤セイ
佐藤セイ

もちろん、そういう発信が「好き」なのは必要!

私は「書く」ことがとにかく好きなので、ライターを選んでいます。

YouTuberだと噛み噛みですぐ挫折していたでしょう…

自分に合った方法を見つけましょう。

最後に:公認心理士や臨床心理士は心理職で食えるのか?

ただ、与えられる仕事を受けて「食う」のは、かなり厳しいと思います。

公認心理師が生まれる以前の2018年4月の時点で臨床心理士は約3万2000人でした。その頃から「心理職って食えないよねぇ」と言っていたのです。

しかし、そこに公認心理師が加わり、さらに心理職の仕事は奪い合いになっていく訳ですから、公認心理師や臨床心理士の肩書を一生懸命アピールして「仕事くれー」と言っているだけでは、どうにもならないのです。

まぁ、これはどんな仕事でもそうです。「新卒だよ」「有名大卒だよ」「資格あるよ」などの肩書だけではもはや生き残れません。

自分でどう生き抜いていくかを考えないと、心理職で食っていくのは難しいように思います。

高校生の質問者さんには、ちょっと難しすぎる話になった部分もあるかもしれません。

でも、将来を決める大切なことなので、ゆっくり読んでもらえたらと思います。

佐藤セイ
佐藤セイ

心理職の仕事については、以下の記事にもつらつら書いていますので、お時間あればご覧ください!

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