Twitterなんかで臨床心理士が「食えない」「お金がない」
とよく呟いているけど本当?
大学院まで出て食えないんじゃ割に合わないよね?
多くの場合、臨床心理士資格のコストパフォーマンスは悪いです。
でも、そもそも臨床心理士は「食える/食えない」では選べない仕事でもあります。
この記事では
・臨床心理士は食えないのか
・どうやって臨床心理士は「食えない」を乗り越えるのか
を解説します。
この記事を読めば、「自分は本当に臨床心理士になりたいのか」について、よりリアルに考えることができるはずです。
臨床心理士は食えないのか?
まずは臨床心理士が「食えない」のかをお話しします
少なくとも贅沢したい人がなるべき仕事ではない
結論から言えば、臨床心理士は必ずしも「食えない」ワケではありません。しかし、「贅沢をして暮らしたい」という人が目指すべき職業でもないのです。
日本臨床心理士会による「臨床心理士の動向調査(第7回)」では、2015年時点でアンケートに回答した臨床心理士の約半数が年収200~400万円という結果になっています。
もちろん、育児や家事などのご家庭の事情や、自分の意思で「年収が低くても自分のペースで働ける方法」を選んでいる方もいるでしょう。
しかし、臨床心理士の求人を見てみると、時給1000~1500円程度のものが多くなっています。
仮にこの時給で一般的な働き方である「1日8時間、週5時間」勤務してみると、
・時給1000円:月16万円、年収192万円
・時給1500円:月24万円、年収288万円
と、なります。
毎日働いても「暮らしが楽」とは感じにくいかもしれません。
「頑張ってバリバリ働きたい!」という人でも、熾烈な就職活動を勝ち抜かないと、高収入を得にくいのが現実なのです。
コストパフォーマンスも良くない
正直なところ、臨床心理士資格はコストパフォーマンスも良くありません。
基本的に臨床心理士資格を得るには「指定大学院修了」が条件となります。文部科学省による「国立大学等の授業料その他の費用に関する省令」と「私立大学等の平成30年度入学者に係る学生納付金等調査結果」をもとに、大学院で修士課程2年間にかかる学費を算出したところ、次の表のような結果になりました。
表 1 大学院修士2年間の学費
また、この2年間は生活のために奨学金を借りる人も多いでしょう。
多くの学生が利用すると考えられる日本学生支援機構(JASSO)では、修士課程の学生は第一種奨学金(無利子)なら月5万円か8.8万円を、第二種奨学金(有利子)では月5~15万円を借りることができます。
もし、最も低額の月5万円貸与を選び、非常勤で得た収入も合わせてものすご~く頑張って生活したとしても、修士を終えた頃には、
5万円×12ヶ月×2年=120万円
を返済する必要が出てきます。これは最低限の金額なので、もっと借りる人は当然、さらに返済額はかさみます。
これだけのお金をかけて、年収200~400万円では「食えない!」と叫びたくなる気持ちになります。
国公立大学院では、大学院以降は実家と世帯を分け、自分に「所得がないですよ」と説明すれば、授業料の半額/全額免除を受けることができます。
私は修士2年間、寮で暮らしていました。
月2万程度(光熱費含む)で生活はかなり助かりました!
国公立大学だったので授業料免除も受けていました。
あとはひたすら非常勤と節約の日々です・・・!!
臨床心理士が「食えない」を乗り越えた方法
ここまで見ていると、臨床心理士っていいことないみたい
それなのに臨床心理士になる人がいるのはなんでなんだろう?
「心の仕事に就かざるを得ない」という衝動を信じる
多くの臨床心理士は「自分は心の仕事に就かざるを得ない」と感じています。
その背景には、
・自分自身が「生きづらい」と感じており、同じように悩む人を助けたいと思っている
・未知な部分の多い不思議な「心」に興味が尽きない
・なんだかよく分からないけれど、どうしても「心」に魅了される
など、さまざまな要因があります。
臨床心理士を目指す学生は「臨床心理士は食えない」という話を何度も何度も耳にしています。また、臨床心理士になって「食えない」という現実にもがっつり直面します。
それでもなお「臨床心理士になりたい」「臨床心理士を続けたい」という気持ちが上回ってしまうのです。
そういう理屈ではない衝動を押さえつけず、その衝動を信じて行動するのも、無意識の心を信じる臨床心理士らしさなのかもしれませんね。
仕事としての「臨床心理士」以上に、
自分自身がこの苦しい世界を生き抜く手段として「臨床心理士」を選ぶ人が多いように感じます。
自分のリアルな世界をきちんと整える
臨床心理士の中には夢やイメージなどの「心的世界」はよく見つめるけれども、自分自身の「リアルな生き方」はあまり見られていないことがあります。
なんとなく「心的世界」に浸っている人の方が「さすが心の仕事をしている人だ」と思われるようなところもあります。少ないお金も研修や学会につぎ込むことが望ましいと言われることもあります。
しかし、リアルな生活が整っていないのなら、それは現実逃避や自己犠牲からの陶酔に過ぎないのかもしれません。
安定して臨床心理士を続けるためには「心的世界」と「リアルな世界」の両方にきちんと足をつけておくことが大切ではないでしょうか。
趣味であれば、どこまでも心的世界に浸っても良いでしょうけれど、リアルな世界で生きる専門家としての仕事ですから、リアルな世界を捨ててしまってはいけないように思われます。
リアルな世界を整えるためにお金が必要で、臨床心理士で食えないのなら、当面の間、自分の仕事の配分を「食えない臨床心理士:100%」から「食える仕事:50%、食えない臨床心理士:50%」に変えてもいいのかもしれません。
人がいるところ全てに心があるのですから、どんな仕事も臨床心理士の糧になるでしょう。
また、税金対策や投資などを勉強するのも、経済的な不安を軽減するのに役立つかもしれません。
臨床心理士がリアルな世界の良さをきちんと理解できるからこそ、今苦しんでいるクライエントさんも「いつかリアルな世界でも幸せになれる」と信じられるのではないかと思います。
私も給料明細や通帳を見る度、「私は一体何をしてるんだろう」と
臨床心理士の仕事が空しくなる瞬間がありました。
お金をちゃんと稼ぐ・守ることは心の健康維持に不可欠です・・・
まとめ
ここまでの話をまとめてみましょう!
今回は「臨床心理士は食えないのか?」という問いに対して、
・少なくとも贅沢したい人がなるべき仕事ではない
・コストパフォーマンスも良くない
という結論をお話ししました。
それでも臨床心理士になる人たちが「食えない」を乗り越えた方法としては、
・「心の仕事に就かざるを得ない」と感じる衝動を信じる
・自分のリアルな世界をきちんと整える
の2つがあります。
基本的に臨床心理士は稼ぐための仕事ではないんだね。
心を探究していくうちに大学教授になったり、開業したりして、
結果として稼げることはあるようだけど・・・
正直なところ「どうしても臨床心理士になりたいんだ!」と思ったら
自分の気持ちを抑えるのは難しい部分があります。
実際、社会に出てから「やっぱり臨床心理士になりたい」と大学院に入学される40~60代の方もいらっしゃいます。
事前に直面するであろう現実を知り、生活面や経済面でできる準備をしておくのがおすすめです!
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