公認心理師とは、心理系では初めての国家資格です。
2017年に公認心理師法に基づいて誕生し、2018年に第1回試験が開催されました。今やっと年長さんくらいの新しい資格です。
心の仕事に興味はあるけれど、大学院に行かないといけないのは大変そう…
大学院に行かなくても公認心理師になる方法ってないのかな?
大学院に行かずに資格取得を目指す方法としては、
・プログラム施設で実務経験を積む方法
・通信制大学で受験に必要な科目を履修する方法
などがあります!
今回は、大学院に行かずに公認心理師になる方法について、いくつかご紹介していきます。
大学院に行かないで公認心理師になる方法はあるの?
そもそも公認心理師の受験資格とは?
まずは公認心理師の受験資格を見ていきましょう。
厚生労働省から出されている受験資格は、ざっくり分けると以下の3つに分類できます。
①大学および大学院で、公認心理師になるために履修が求められる科目を修めて課程を修了した者、またはそれに準ずる者。
②大学で公認心理師となるために履修が求められる科目を修めて卒業した者、またはそれに準ずる者で、卒業後一定期間、定められた施設において心理に関する支援の業務に従事した者。
③上記2つに掲げる者と同等以上の知識および技能を有すると認められた者。
出典:厚生労働省「公認心理師のカリキュラム等について」より一部改変
これを見てみると、②と③が、大学院に進学せずに受験資格を得られる可能性のあるルートであることがわかります。
②の場合
②の場合は、
・公認心理師が履修すべき科目(公認心理師カリキュラム)を備えている大学を選ぶ
・大学卒業後に心理に関する実務経験が積める特定の施設で働く
という2点がポイントになります。
③の場合
③の場合は要件に当てはまる人、そうでない人が細かく分けられているので後ほど詳しく解説します。
「準ずる者」とは?
「準ずる者」とは、これは文部科学大臣・厚生労働大臣の認定によって与えられる受験資格を指しています。
この後お話しする「公認心理師の資格取得方法」における8つのルートのなかで「Cルート」と呼ばれる方々が、この「準ずる者」に該当します。
公認心理師になるためには必ずしも大学院に進学しなくてもいい。
しっかりと要件を満たせば資格取得を目指せるんだね!
公認心理師の受験資格を取得するまでのルート
それでは、公認心理師試験の受験資格取得するまでのルート(区分)をもう少し詳しくご紹介します。
もともと厚生労働省が定めた資格取得方法のルート(区分)は8つありました。
ただし、Gルート(実務経験5年以上・講習の受講で受験資格が認められたルート)は、第5回試験(令和4年7月17日)をもって終了となっているので注意が必要です!
Gルートはもともと公認心理師が作られてから5年間だけ実施される「特別な措置」として設置されていました。
なので、今はもうGルートを選ぶことはできません。
今回のテーマである「大学院に行かずに公認心理師になるルート」としては、Bルート・Cルート・Fルートの3つがあります。
大学院に行かないで公認心理師受験資格の取得を目指す方法
ここでは、大学院を経由せずに既に社会人として働いていたり、独学で資格取得を目指そうと考えている人たちの場合について解説していきます。
Cルートなら独学で資格取得が目指せる?
Cルートは大学も大学院も関係ないんだよね?
だったら大学や大学院なんて行かずに、ファイナンシャルプランナーみたいに独学すれば資格が取れるんじゃない!?
こんな風に独学での受験をイメージする人もいるかもしれません。
しかし、結論から言えば、独学だけでは受験資格を得ることはできません。
大学にも大学院にも行かずに公認心理師の受験資格を得られる可能性のあるルートは「Cルート」しかありませんが、この場合でも厚生労働省の認定を受ける必要があります。
Cルートの認定基準は以下の通りです。
1.日本の大学(25科目)+外国の大学院
出典:厚生労働省「公認心理師法第7条第3号(区分C)に基づく受験資格認定(外国大学等のご出身の方、過去に大学で履修科目が一部不足していた方)」より
2.外国の大学+日本の大学院(10科目)
3.外国の大学+日本のプログラム施設(9施設)
4.外国の大学+外国の大学院
5.外国の大学院+外国の心理職資格
6.過去に大学で履修科目が一部不足していた方
6.に記載されている「履修科目が一部不足していた方」は、公認心理師となるための必要科目を全て履修していない人を指します。
具体的には、以下の条件を満たす方が該当します。
・2017年9月15日より前に大学に入学し、公認心理師となるために必要な23科目以上を履修して卒業した方
・2022年3月31日までに大学院に入学し、必要な科目を履修して修了した方
・申請日時点で1ヶ月以上の実務経験がある方
「履修科目が一部不足していた方」いわゆる「スキマ世代」のCルート受験については、下のブログに詳しくまとめています!↓↓
Cルートでも、AルートやBルートと同等の知識や技能を持つことが必要。
「大学に行かなくてOK」なんて甘いルートはないんだね。
大学院に行かずに実務経験で受験資格を得るBルートとFルート
大学で必要な科目を履修したならBルート
4年制大学で必要な科目を履修している場合は、大学院に進まずに受験資格が得られるBルートが基本となります。
Bルートは、
・4年制大学で施行規則第1条の2で定められた科目を履修(準ずる者を含む)すること
・施行規則第5条で定める施設(プログラム施設)での2年以上の実務経験を積むこと
上記2つの条件を満たすと得られる受験資格となります。
施行規則で定められた施設には、
・学校
・裁判所
・保健所や保健センター
・精神保健福祉センター
・児童福祉施設や児童相談所
・病院や診療所などの医療機関
・障害者支援施設
・その他厚生労働大臣が指定する施設
などがあります。
2023年9月16日時点で、認められている施設は以下の9施設です。
施設名 | ホームページ・連絡先 | 認定日 | |
1 | 少年鑑別所及び刑事施設 | 法務省矯正局 | 平成30年3月30日 |
2 | 一般財団法人愛成会 弘前愛成会病院 | 一般財団法人愛成会 弘前愛成会病院 | 平成30年3月30日 |
3 | 裁判所職員総合研修所及び家庭裁判所 | 最高裁判所事務総局家庭局 | 平成30年4月27日 |
4 | 医療法人社団至空会 メンタルクリニック・ダダ | 医療法人社団至空会 メンタルクリニック・ダダ | 平成31年2月26日 |
5 | 医療法人社団心劇会 さっぽろ駅前クリニック | 医療法人社団心劇会 さっぽろ駅前クリニック | 平成31年2月26日 |
6 | 学校法人川崎学園 川崎医科大学附属病院 | 学校法人川崎学園 川崎医科大学附属病院 | 令和2年3月17日 |
7 | 学校法人川崎学園 川崎医科大学総合医療センター | 学校法人川崎学園 川崎医科大学総合医療センター | 令和2年3月17日 |
8 | 社会福祉法人風と虹 筑後いずみ園 | 社会福祉法人風と虹 筑後いずみ園 | 令和2年3月17日 |
9 | 社会福祉法人楡の会 | 社会福祉法人楡の会 | 令和2年9月29日 |
これらの施設で心理に関する業務に従事することで受験資格を得ることが可能となります。
プログラム施設については、次の記事にも詳しくまとめています!
現時点では実務経験を積める機関の数が少ないため、Bルートは狭き門となりそう。
今後、プログラム施設が増えれば、もう少し使い勝手が良いルートになるかもしれません。
法施行前に大学で心理学を履修していたならFルートの可能性も
大学院を経由せずに受験資格が得られるルートには「Fルート」もあります。
・法施行前に4年制大学に入学
・学籍が切れる前までに「経過措置対応科目」の単位を全て修得して卒業
・法の規定する認定施設(プログラム施設)で、心理関係の仕事に2年従事
という3つの条件を満たした人が該当します。
「経過措置対応科目」は、「大学における必要な科目」のうち、特例で定められた科目です。
本来であれば25科目以上を履修しなければいけませんが、
・心理基礎科目:3科目以上
・心理学の基本的理論に関する科目:4科目以上
・心理状態の観察及び分析並びに心理に関する相談、助言、指導その他の援助等についての基本的理論及び実践に関する科目:2科目以上
・主な職域における心理学に関する科目:2科目以上
・心理学関連科目:1科目以上
計12科目を履修していれば、大学における公認心理師受験資格に必要な科目を修めたと認定されます。
厚生労働省「公認心理師のカリキュラム等について」より
4年制大学を出ていても必要な科目数を満たしていなければ、Fルートで受験資格を得ることはできません。
卒業後はBルートと同じく、プログラム施設で2年以上の実務経験を積むことで、公認心理師の受験資格を得られます。
大学で心理学を専攻していた方であれば、対象となる可能性はありそうです。
そもそも大学での履修科目が不足している場合は?
大学に編入学して必要な科目を履修する
大学での履修科目が不足している場合に考えられる方法が「大学編入学」です。
編入学とは大学を卒業した後に、別の大学に教育課程の一部を省いて途中の年次から入学することを指します。
要するに1年生からではなく、2年生や3年生として入学する…ということ
編入学が認められるのは次の方です。
1.短期大学を卒業した者
2.高等専門学校を卒業した者(いわゆる「高専」)
3.専修学校の専門課程を修了した者(いわゆる「専門学校」)
4.修業年限が2年以上その他の文部科学大臣が定める基準を満たす高等学校専攻科修了者
文部科学省「大学への編入学について」より一部追記
大学に編入学して、必要な科目を履修すれば、AルートやBルートで公認心理師の受験資格が得られます。
編入学するためには「編入学試験」があります。
受験内容は大学によって異なりますが、基本的に
・英語
・小論文
・面接
が主になります。
※大学によっては「専門科目」などの試験が課せられる場合もあります。
編入学試験の時期は大学によってバラバラなので、志望校があればしっかりチェックしておきましょう。
大学は3年次編入学が多いですが、本来4年間でバランスよく履修すべき科目たちですから、必ずしも2年間で単位が揃えられるとは限りません。
2年次編入学をおすすめしている大学もあります。
履修を終えるまでに2年以上かかる可能性も考慮し、時間やお金を用意しておきましょう。
通信制大学にて必要科目を修了する
そもそも大学で履修した科目が足りないや…
もう公認心理師を目指すのは無理かなぁ…
働きながら、公認心理師を目指すなら
「通信制大学」も1つの方法です。
最後に、通信制大学を利用して受験資格を得る方法について解説します。
一般的な通信制大学の入学条件は以下の通りです。
・入学資格:高等学校を卒業またはそれと同等以上の学力があると認められた者、あるいは高等学校卒業程度認定試験(旧大学入学資格検定)に合格した者
・入学選考:筆記試験はなく、原則として「書類選考」(一部の大学では「志願理由書」や「小論文」などの提出が求められる場合あり)
公益財団法人私立大学通信教育協会「入学について」
通信制大学でも、公認心理師に必要なカリキュラムを受ける事ができ、AルートやBルートとして受験資格を得ることが可能です。
通信制大学は夜間や休日に通えるため、社会人として働きながらでも、やる気があれば公認心理師を目指せます。
なお、通信制大学も2年次や3年次に編入学することが可能です。
ブランクがある人でも資格取得を目指せるんだね!
大学院に行かないで公認心理師になる方法まとめ
今回は、大学院に行かずに公認心理師を目指す方法について解説しました。
大学院に行かずに公認心理士になる方法としては
・Bルート:大学で公認心理師に必要な科目を履修→プログラム施設で実務経験2年
・Cルート:AルートやBルートと同等の知識や技能を持っていることを認定してもらう
・Fルート:法施行前に大学で定められた12科目以上を履修→プログラム施設で実務経験2年
という3つの方法があります。
大学での履修科目が満たせない場合は、
・大学への編入学
・通信制大学への入学や編入学
という方法があります。
なんにせよ、勉強は欠かせないのか…
公認心理師になるまでもたくさん勉強しないといけないけれど、公認心理師になったあとはもっともっと勉強しないといけません。
心の状況は社会や時代の変化でどんどん変わるからです。
「公認心理師をとるためだけに勉強する」という人は、心理職を仕事にするとしんどいかも…。
心理の勉強が苦しいながらも楽しめるか、よ~く考えてみてくださいね。
下の「『心』のお仕事」は、心理職として働くかどうか検討する際におすすめの本。公認心理師や臨床心理士といった心理職だけでなく、精神科医や看護師など幅広い領域の方が執筆しています。
文章は易しく、しかし心の仕事の厳しさはしっかりみっちり書かれています。最初の章タイトルが「心の仕事につきたい? とりあえずやめておきましょう! 」ですから…。
14歳向けの本ですが、大人が読んでも勉強になることは多いです。
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