京都大学には4つの大学寮が存在しています。
・吉田寮
・熊野寮
・女子寮
・室町寮
の4つです。
そのうち、室町寮は大学院生用の寮なので、学部に入学した新入生には上の3つの選択肢があります。
また、それに加え、大学寮ではないものの
・京都大学YMCA地塩寮
も入寮可能です。
なお、現時点では吉田寮への入寮は大学には認められていません。
それでも吉田寮にも一応学生が住んでいて(大学は「不法占拠」と呼んでいるけれど)、入寮選考を実施しているので、住めない訳ではない…はず。
そんな訳でこの記事では、かつて京都大学のどこかの寮に住んでいた私が、京都大学の学部生が(一応?)入寮できる4つの寮をご紹介します。
吉田寮
歴史・文化・自然を全部詰め込んでかきまぜた「吉田寮」
一言でいえば「ボロい」
それが吉田寮です。
かつて寮の見学に行ったら、吉田寮生が
吉田寮は火をつけたら3分で燃え尽きますよ、HAHAHA
と笑っていました。こわ。
それから10年以上経っていますが、とりあえず物理的には燃えてはいません。別の意味では燃えているのか…?
旧棟は築100年以上が経過している木造建築です。周囲が鬱蒼とした木々に囲まれているため、非常に陰気な雰囲気が漂っております。
吉田寮生は見た目こそ常人離れした仙人のような人もいますが、おおよそ寛容でオープンな方々。冬には玄関口にこたつを置き、1日麻雀をやっています。
吉田寮は家賃が400円。水光熱費を合わせても月3000円程度であるため、全然お金を使わない生活。
その余ったお金をフルにつぎ込んで麻雀をするため、吉田寮のレートはめちゃくちゃ高いそう。1日に10万飛んで行った寮生もいるとかいないとか。
吉田寮祭という祭を開催し、鴨川を逆走したり、にわとりを絞めたりするそうな。
猫・うさぎ・あひる・孔雀・やぎなど、様々な生き物と共生しており、孔雀は京大の11月祭(NF)でお披露目もされています。
入寮案内のパンフレットはめちゃくちゃ分厚く、中身は寮生の趣味的なものがほとんど。
熊野寮が警察沙汰のトラブルを起こすと意味なく巻き込まれがち。
吉田寮と京都大学が壮絶に揉めている理由
吉田寮生は旧棟の建物(築100年を超える)に強い愛を感じており、そこを建て直したい大学側と、補修を求める吉田寮側でもめ続けています。
まぁどっちの気持ちもわかります。吉田寮は歴史があるし、独特の文化がある。
でも、正直危ない。
吉田寮と同時期に建てられたとおぼしき「学生集会所」なんかは、民族舞踊研究会(wakatte.TVの高田ふーみんが所属してたサークル)が2階で踊っていると1階の天井の欠片が降ってきていましたからね…。もう建て直されたけど。
ただ、新棟と呼ばれる新しい建物ができ、そちらはめちゃくちゃきれいです。
そもそも吉田寮と大学がなんでこんなに争っているかっていうと、これら京都大学の大学寮は日本全国ではもはや数少ない「自治寮」だからなんですよね。
自治寮というのは大学が管理するのではなく、学生が自分たちで運営・管理し、トラブルにも対応する寮のこと。
だから、吉田寮のことは吉田寮生が決めてきたし、大学が「こうしてほしい」という話も上から下への「指示」ではなく、「意見」として受け止め、大学と吉田寮生とで対等に話し合い、1つ1つ決めてきた歴史があるのです。
当然、旧棟をどうするかっていう話も1つ1つ決めるつもりだったんですよね。寮生は。
ところが大学が強く「指示」をして、話し合いを一切受け付けない強硬な姿勢をとってきたから吉田寮生としてはびっくりしているし、納得いかないしで、わちゃわちゃしている訳です。
下の画像は、大学から吉田寮に退去通告が出るまでの経緯を描いた立て看板です。
2018年に見かけて、なんとなく撮った立て看板なので、写りが良くないのは許して…。
もう立て看板が懐かしいね。
大学の土地なんだから…とかいう意見もあるけれど、やっぱり「自治」ってそんな簡単に奪われていいものではないと思うんですよね。
私は「学生自治」の文化は大切にしてほしいし、最近の京大は都合よく「自由の学風」を謳うくせに、学生の自由をどんどん奪っている気がするので、吉田寮には頑張ってほしいですけど、でも理不尽でしんどい思いはしてほしくないなぁ…とも思う。
熊野寮
悪目立ちしているけど大体は平和な「熊野寮」
京都大学で警察と揉め、やたらとニュースになるのはここ熊野寮。
公安部によるガサ入れはもはや風物詩ですよね…。
しかし、そういった活動に参加しているのは一部の寮生だけで、他の寮生はいたって平和的で普通の学生(?)です。
吉田寮生が達観した仙人のような風情を醸し出しているのに比べ、多くの熊野寮生は本当に「普通」という印象があります。
コンクリート校舎のような建物が並んでおり、住んでいる寮生の人数としては最大。
家賃は確か700円くらい?水光熱費合わせて月4100円だそうです。安い。
入口には学生運動の時に書かれた落書きが残っており、時代を感じさせます。
私が熊野寮のトイレに行ったとき、手をかざすだけで水が出る便利な自動水栓の蛇口が導入されていて驚いた覚えがあります。
なんだ、この建物のボロボロさにまったく見合わない最新システムは!?
ただ、洗面台に対して水の勢いが強すぎて、跳ね返った水により服がびしょびしょになる欠点を持っていました。
なんだこのシステムは…?!(困惑)
なんで導入したの???
熊野寮祭では、京大の時計台にはしごをかけて登っては大学と喧嘩をしていますね。毎年の恒例行事であり、学生も「またか…」と思いながら見守っています。
私も一回登りたかったけど、大学の指導教官から直々に「のぼってはい・け・ま・せ・ん・よ!!!」と注意喚起され、さすがに登れませんでした。まぁ、そうじゃなくても高さが怖くて登れなかったと思いますけど。
時々、吉田寮と友好的な戦争をしているようです。
そういえば熊野寮の女子寮生の方がこんな本を書いておられたので読みました。
中核派とかに一切関わらず、普通に寮生活を送る寮生のリアルな感じがよく分かります。
あと、ネタバレになるので細かいことは書けないですけど、純粋に泣いてしまった部分もあります。その部分は特に熊野寮だから…という話じゃないですが。
あと、熊野寮生と言えば、phaさんが有名ですね。
phaさんの本を読んでいると、京大寮生ならではのゆる~い空気感が伝わってきて懐かしい感じがします。
熊野寮はYouTubeにて施設紹介動画を挙げています。
実際の熊野寮を見てみたい人におすすめ。
(なお、チャンネルにはこの動画しかないです)
あと、熊野寮のことを知りたいなら、いだちゃんねるさんの動画もおすすめ!
住居としての熊野寮はもちろん、
アジトとしての熊野寮まで見られる希少な動画です。
女子寮
京大の大学寮唯一の良心「女子寮」
秘密多き、女の園。それが京都大学の「女子寮」
非常にセキュリティが高く、その存在はあまり公にされていません。
はじめて訪問したときは、お姉さま方が紅茶を入れてくださいました。
もうその時点で吉田寮とか熊野寮とは一線を画す。
最近リフォームしてキレイになったとか。
リフォーム前は確か2人1部屋だったと思うのですが、リフォーム後は個室になっているみたいですね。
その影響で寮費は家賃・水光熱費込みで月25000円。吉田寮や熊野寮と比べると高いけど、普通に下宿するのに比べれば安い。水光熱費込みで25000円はなかなかない。
男子禁制はもちろん、門限・家族や友人が入れる区域の制限など、かなり厳しいらしく、セキュリティーも安心。
京大の女子は多くはないため、学部によっては女子同士のつながりは希薄になりがちです。特に工学部や理学部あたりは女子が少ない。
なので、京大女子同士で仲良くしたい人にはおすすめです。
なお、インカレサークルに入れば、京女やダム女などの女子学生と関わることができますが、価値観とか美的な感覚とかが色々違い過ぎる!と驚くことも。でも、異文化なだけで、そんなに怖いことはない…と思う。知らんけど。
大学当局の通達に従順(自治寮としては機能していない)なため、吉田寮・熊野寮に手を焼いている大学としては心休まる存在となっているようです。
番外編:京都大学YMCA地塩寮
京大YMCAによる小規模でアットホームな「地塩寮」
京都大学が設置した大学寮ではないのですが、京都大学の新入生が入寮できる選択肢の1つとして「京都大学YMCA地塩寮」があります。
これはその名の通り、「京都大学YMCA」という組織が運営する寮。読みは「ちえんりょう」ですが、「ちしおりょう」と呼ばれがち。
名前の由来は聖書の「あなたがたは地の塩、世の光である」という言葉からだそうなので、「ちしお」の方が適している感じがしますが、「ちしお」だと「血潮」をイメージするから避けたんでしょうかね?
そこそこ綺麗で、個室がある点が大学寮との最大の違いだったのですが、女子寮が個室化したことで個性はやや失われましたね。
寮費は家賃・水光熱費込みで月24000円と安いけれども、女子学生は女子寮の方が魅力的かもしれません。でも、「絶対に個室がいい!」という男子学生には地塩寮が最有力候補となります。
男女合わせて20~30人ほどが一緒に暮らしており、これまで紹介してきた寮に比べると小規模。
京大正門まで徒歩3分ほどの場所に建っており、立地の良さは熊野寮を上回ります。
なお、吉田寮は1回生が一般教養を受講するために通い詰める「4共」という建物のすぐ裏に建っているので、1回生のうちは立地の良さ最強です。
YMCAはキリスト教青年会の略で、入寮にあたって信仰は自由。
HPによると寮生の大半はノンクリスチャンだそうです。
ちなみに京大構内で宗教勧誘を受けることがありますが、基本的にカルト宗教なので耳を貸さずにかわそう。
アジア系のキレイなお姉さんが声をかけてくれるので、気持ちはいいんですけど…。
相手にするとピクミンみたいにどこまでも着いてくるなど、なかなか面倒くさくなるので、申し訳ない気持ちがしてもガン無視がおすすめ。
大学寮ではないんですが、熊野寮が警察沙汰を起こすとなぜか巻き込まれていることもあります。
有名な建築家ヴォーリズさんが建築した「京都大学YMCA会館」がとてもおしゃれです。ときどきコンサートやイベントが開催されています。
更新は2018年頃に停止していますが、YouTubeチャンネルもあるようです。
おわりに
大学生活は自由です。殊に京都大学は「自由の学風」を謳っているとおり、かなり放任されます。
最近では管理がどんどん厳しくなっていて、つまらない大学に成り下がりつつあるけれど。
それでも高校までに比べて自分で動かなければ何も始まらないし、誰とも出会えない危険性を秘めています。
大学寮に入れば、少なくとも寂しくはないです。
もちろん、喧嘩をすることもあるし、恋愛沙汰に巻き込まれることもあるし、掃除当番や会議などでうんざりすることは多々あります。
でも、他の学年・学部の人と普通に話ができたり、授業をさぼってもノートがもらえたり、飲み会を突発的に開いたり、麻雀やボードゲームのメンツがすぐ揃ったり、結構楽しいこともあります。
大学寮出身者としては人見知りの学生さんにほど、割とおすすめしたいな。と思います。
京大寮だけではなく、京大の雰囲気を知りたいならこちらもどうぞ。
この本は小説ですが、京大の学祭(NF)は割とフィクション並みに変なモノが多いです。
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