公認心理師を目指したい!
でも、どうやって大学院を選べばいいのかな?
公認心理師を目指す場合、どの大学院を選べばいいのか悩みますよね。
実は、日本には公認心理師に対応している大学院が200校近くあります。
今回は、たくさんある大学院のなかから
・自分に合った大学院を選ぶポイント
・おすすめの大学院10選
についてご紹介します!
公認心理師の大学院を選ぶ5つのポイント
1.公認心理師のカリキュラムに対応しているか
大学院を選ぶ際、「公認心理師のカリキュラム」に対応しているかどうかが必須条件となります。
公認心理師の大学院で必要な科目は、右の10科目です。
履修科目が不足していた場合、頑張って2年間大学院に通っても、公認心理師の受験資格を得ることはできません。
「臨床心理士指定大学院」であっても、「公認心理師には対応していない」という可能性もあります。
公認心理師に対応しているかはきっちり確認しておきましょう。
なお、公認心理師の受験資格を得るには7つのルートがあります。
大学院に行くのは区分A、D、Eを選んだ場合です。
・区分A(Aルート):4年制大学で公認心理師に必要な科目を学び、大学院でも必要な科目を学ぶルート
・区分D(Dルート):公認心理師法が施行される前に大学・大学院にいた人のルート(大学・大学院で履修した科目を公認心理師に必要な科目に読み替えるルート)
・区分E(Eルート):公認心理師法が施行される前に大学にいて、施行後に大学院に進むルート(大学での履修科目を公認心理師に必要な科目に読み替えた上で、公認心理師対応の大学院へ進学するルート)
区分Dと区分Eは、公認心理師法で急に状況が変化してしまった人への特例措置。
そのため今後、公認心理師を目指して大学・大学院に進学する方は「区分A(Aルート)」を選ぶことになります。
2.自分が学びたいことが学べるか
自分に合った公認心理師対応大学院を選ぶときには、
・自分の興味のある研究分野に取り組めるか
・自分の学びたい療法や検査が学べるか
も大切にしましょう。
児童期の研究がしたいのに中年期女性の研究をメインとする教授の研究室に入ったり、認知行動療法をバリバリやりたいのにユング派の大学院に来たりすると、「こんなハズじゃなかった…!」と後悔してしまいます。
色々な体験をすることも必要だけど、最低限調べるのは大事。
大学院で学ぶアプローチや研究してきた内容は、大学院修了後の就職先や目指す公認心理師像にも関わります。
自分が進みたい専門分野を整理してみましょう!
3.どんな経歴の教員がいるか
公認心理師対応の大学院を選ぶときには「どんな経歴の教員がいるか」も調べておきましょう。
今までの経歴や研究について知りたい場合、大学院HPの教員紹介などに詳細が載っています。研究室のサイトがつくられていることもあります。
著書などを読んで特に興味を持った教員がいれば、著者プロフィールをもとに検索してみても良いでしょう。
自分が進みたい分野や学びたい研究に詳しい教員がいる大学院を選びましょう。
なお、大学院は小学校・中学校・高校のように決まったカリキュラムがないため、所属している大学教員1人1人の専門によって学べる内容が変わってきます。
精神分析で有名な大学院に行くぞ!
と、思っても、入学してみたら精神分析を専門としていた先生が異動したり、退官したりしていて
せっかく入学したのに精神分析を教えてくれる先生がいなくなっちゃった!
ということもありえます。
異動については教員のさまざまな事情が絡んでいるため、事前に予想できないこともあります。
ただ、退官などは年齢で明らかにわかります。調べればわかる情報は見逃さないように気をつけましょう。
1時間の下調べが2年間を左右する!…かも。
4.過去の実績(就職率や就職先)
公認心理師対応の大学院に進むからには、公認心理師として働く未来を思い描いているのではないでしょうか。
だからこそ、その大学院の修了生の就職率や就職先までしっかり見ておきましょう。
就職先が自分が目指す道と必ずしも一致している必要はありませんが、どんな道に進んだ修了生がいるのかは参考になります。
自分が進みたい就職先や分野に進んだ人がいれば、大学院や教員とのつながり次第で詳しい話を聞けるかもしれません。
心理業界では結構「コネ」での就職は多いです。教員が紹介してくれたり、先輩が転職するときに自分のいたポストを譲ってくれたり、同期が「この仕事してくれる人を探しているんだけど、やってみない?」と声をかけてくれたり…。
なので、志望する領域に就職している修了生が多いほど、自分も志望領域で就職できる可能性は高まります。
5.学費や場所など個人的な面
大学院は最低でも2年間は通い続けることになります。
そのため、「学費」や「場所」などが過度に負担にならず、自分が納得できる大学院であることも大切です。
学費を抑えたい場合は国公立を選びましょう。
国公立の大学院1年目の学費は基本的に
・入学金:282,000円(初年度のみ)
・1年間の授業料:535,800円
合計817,800円
となっており、私立の大学院より費用を抑えることができます。
また、経済的に困窮している学生の場合、「授業料免除」の申請を行って受理されれば、授業料の半額免除・全額免除を受けられます。
また、どこの大学院を選ぶかによっては入学前に引っ越しが必要になります。スケジュールや必要な資金などをしっかり確認し、心・身体・時間・お金に余裕が持てるようにしておくと安心です。
引っ越しをしない場合でも、実習や研究で忙しい大学院生活のなかで「片道2時間」などの長時間の通学は大変なもの。通学がどれくらい自分の負担になるかも見通しを持っておきましょう。
公認心理師おすすめ大学院10選
ここからは、独断と偏見で選んだおすすめの大学院を10校ご紹介します。
以下を基本情報とします。
①公認心理師カリキュラムに対応している専攻
②国立or私立
情報は全て2023年10月現在のものです。
東京大学大学院教育学研究科
最初にご紹介するのは、東京大学大学院教育学研究科「臨床心理学コース」です。
まずは基本情報の確認から。
東京大学大学院教育学研究科
①臨床心理学コース
②国立
「科学者-実践者モデル」に基づき、日本だけでなく、グローバルな視点を持った臨床心理学のリーダー的人材育成に力を入れています。
広い視野で臨床分野の研究をしたい・活躍していきたいと考えている人におすすめです。
東京大学では、臨床心理学を「社会」にどう伝えていくか、活用していくか…ということを大切にしていることがうかがえます。
京都大学大学院教育学研究科
次にご紹介するのは、京都大学大学院教育学研究科「臨床心理学コース」です。
京都大学大学院教育学研究科
①臨床心理学コース
②国立
臨床実践体験に基づいた研究を大切にしており、「附属臨床教育実践研究センター(連携教育学講座)」と協力した教育研究活動に参加しながら学べます。
附属臨床教育実践研究センターでは
・心理教育相談室:大学院生が教員指導のもと、地域社会の方の相談に対応する機関
・こころの支援室:東日本大震災によって関西に避難してきた家族への支援を行う機関
など、実践的な臨床への取り組みが行われています。
京都大学大学院教育学研究科「附属臨床教育実践研究センター」「こころの支援室」より
教員だけではなく、バリバリと現場でやってきた臨床実践指導者養成プログラムの受講生と接することで、より臨床の幅を広げられるのがメリットかも。
京都大学大学院の心理臨床家養成についての詳しい情報は「心理臨床の広場 第12巻(1)」の記事もチェック!
大阪大学大学院人間科学研究科
今度は「大阪大学大学院人間科学研究科」を見ていきましょう。
大阪大学大学院人間科学研究科
①所定の科目受講が可能な講座・研究分野による(例:臨床心理学講座臨床心理学)
②国立
「公認心理師プログラム」が準備され、臨床心理学コースを選ばなくても、教育学系・行動学系の研究分野を中心に所定の科目を履修して公認心理師の受験資格を得ることができます。
どの学部にいても、科目さえ履修すれば取得できる「教員免許」と同じ感じです
「心理実践実習」は豊富な学外実習先が準備されており、臨床心理学コースの場合は学内の「心理教育相談室」も実習先に加わります。ただし、以下の注意点があります。
公認心理師のために進路が固定されないのはメリットだけど、実習を受けられない可能性があるのは少し怖いかも?
しっかり準備しておけば高いハードルではなさそうだけれど、リスクを避けたいなら大阪大学以外の学校も一応検討しておくのがいいかも?
どのコースでも公認心理師を取得できるとはいえ、学べる内容も考えると専門性の高い「公認心理師」を目指す場合、大阪大学大学院人間科学研究科の教育学系「教育心理学領域」や「臨床心理学研究領域」を目指すのが良さそうです。
大阪大学大学院の心理臨床家養成については「心理臨床の広場第14巻(1)」の記事もチェック!
名古屋大学大学院教育発達科学研究科
続いては、名古屋大学大学院教育発達科学研究科「心理発達科学専攻精神発達臨床科学講座」です。
名古屋大学大学院教育発達科学研究科
①心理発達科学専攻精神発達臨床科学講座
②国立
講座の教員が12名と多い(2023/10/8時点)ため、教員1名が担当する院生は少人数。研究・臨床ともにサポート体制が充実しているのが魅力です。
・乳幼児期から老年期までの発達
・家族・職場などの生活に関わる場面
・非行少年や犯罪
など、様々な領域で活躍する先生方から臨床的援助の在り方について学ぶことができます。
下のページには、大学院生による「1日のスケジュール」や「大学院での学び方」「大学院生活へのアドバイス」などについてのメッセージがまとめられています。
名古屋大学大学院の先輩たちのリアルな声をぜひ確認してみて!
名古屋大学大学院の心理臨床家養成についての詳しい情報は「心理臨床の広場 第16巻(1)」の記事もチェック!
九州大学大学院人間環境学府
次にご紹介するのは九州大学大学院人間環境学府です。ここには公認心理師になるための専攻が2つ存在しています。
九州大学大学院人間環境学府
①実践臨床心理学専攻 / 人間共生システム専攻臨床心理学指導・研究コース
②国立
実践臨床心理学専攻
「実践臨床心理学専攻」は2年制の専門職大学院です。
即戦力となれるような高度な臨床実践力と多職種と連携できる能力を備え、様々な現場で活躍できる公認心理師や臨床心理士の育成を目指したカリキュラムが実施されています。
人間共生システム専攻 臨床心理学指導・研究コース
「人間共生システム専攻 臨床心理学指導・研究コース」は、修士課程(2年間)と博士課程(3年間)の計5年間を前提としたコース。
臨床実践力だけでなく、研究力も身に着け、将来的には臨床心理学の「研究者」や「指導者」となることを目指すコースです。
最初から「現場でバリバリやっていくんだ!」と思っているなら、実践臨床心理学専攻が合っていそう。
一方、「アカデミックな世界で働きたい」なら人間共生システム専攻臨床心理学指導・研究コースが良いね。
どちらの専攻でも、学内・学外の実習は充実。
九州大学大学院の心理臨床家養成については「心理臨床の広場第12巻(2)」の記事もチェック!
明治大学大学院文学研究科
今度は、明治大学大学院文学研究科「臨床人間学専攻臨床心理学専修」を見ていきましょう。
明治大学大学院文学研究科
①臨床人間学専攻臨床心理学専修
②私立
さまざまな専門領域の教員が所属しているため、授業や指導を通して幅広い視点から専門性を深めることができます。
修士論文の構想発表については臨床人間学専攻全体で実施されるため、臨床心理学専修だけではなく、臨床社会学専修の教員・大学院生と共同となっています。様々な視点から自分の研究テーマを見つめられる良い機会となります。
明治大学大学院文学研究科博士前期課程(修士課程)1年目の学費は
・入学金:200,000円(初年度のみ)
・1年間の授業料:560,800円
・臨床指導料:50,000円
・教育充実料:60,000円
・諸会費:3,000円
合計873,000円(入学金なしだと673,000円)となっています。
国公立大学院の年間学費535,800円(入学金除く)と比べると、10万円以上高い。
でも、入学金は国公立の方が高いし、2年間の差は「192,400円」ほど。
そこまで差はないのかも?
早稲田大学大学院人間科学研究科
続いては、早稲田大学大学院人間科学研究科「臨床心理学研究領域」の解説です。
早稲田大学大学院人間科学研究科
①臨床心理学研究領域
②私立
学校カウンセリング学ゼミや行動心理学ゼミなど、8つの研究を中心にゼミが開講されています。
国内外を問わず活躍できる人材の育成を目指しており、質の高い臨床心理学研究と心理臨床実践の双方の能力を身につけることができます。
行動分析とか認知行動療法で有名な先生が「早稲田大学大学院」にはたくさんいます!
そういう方面に進みたい方にはおすすめ。
早稲田大学院人間科学研究科博士前期課程(修士課程)1年目の学費は
・入学金:300,000円(初年度のみ)
・1年間の授業料:901,000円
・演習料(実験演習料):70,000~90,000円
・互助会費:3,000円
合計1,274,000~1,294,000円(入学金なしだと974,000~994,000円)となっています。
高い!!!説明不要!!!
ただ、早稲田大学は給付型・貸与型の奨学金も色々あるので、活用すれば負担は軽減できるかも。
筑波大学大学院人間総合科学学術院
今度は、筑波大学大学院人間総合科学学術院「心理学学位プログラム心理臨床サブプログラム」を見てみましょう。
筑波大学大学院人間総合科学学術院
①心理学学位プログラム心理臨床サブプログラム
②国立
基本的な臨床心理学に関して学べるだけでなく、革新的な取り組みも意欲的に行う筑波大学大学院では、国際競争力の高い研究者の養成にも力を入れており、
・オンラインでデータを扱うための講習や教育
・英語による論文投稿に向けた講座や支援助成
などを含めたプログラムを展開しています。
世界で活躍する心理学研究者を目指す方におすすめです。
心理学は社会の動きに連動する学問。
数年前に学んだ知識はすっかり時代遅れ…なんてことも。
最新の動向をチェックできるように、世界とつながる「オンライン活用力」と「語学力」は研究者でなくても持っておきたいね。
筑波大学大学院の心理臨床家養成についての詳しい情報は「心理臨床の広場 第15巻(2)」の記事もチェック!
お茶の水女子大学大学院人間文化創生科学研究科
お茶の水女子大学大学院人間文化創生科学研究科「人間発達科学専攻 発達臨床心理学コース」を見てみましょう。
お茶の水女子大学大学院人間文化創生科学研究科
①人間発達科学専攻 発達臨床心理学コース
②国立
発達臨床心理学コースとしては、次のような学生を求めているとのこと。
(1)臨床心理士になりたい者で、かつ相当の知力、意欲、時間のある方
(2)臨床心理学や発達心理学の研究者になりたい方
お茶の水女子大学「大学院博士前期課程 人間発達科学専攻 発達臨床心理学コース」より
「公認心理師」だけでなく「臨床心理士」の取得を目指しており、アカデミックの世界でガンガン活躍していきたい女性におすすめの大学院といえるでしょう。
現場で活躍したい公認心理師志望の方にはちょっと不向きかも。
学内の雰囲気や施設設備については、以下の動画でざっくり掴めます。
関西大学大学院心理学研究科
最後は、関西大学大学院心理学研究科「心理臨床学専攻」をご紹介します。
関西大学大学院心理学研究科
①心理臨床学専攻
②私立
認知行動療法・ロジャーズ・フォーカシングなど様々な心理療法を専門とする教員から学べます。
ロールプレイやプログラムの実施など現場で働くための実践的な授業もあり、それぞれの専門性に特化した教員のもとで実務を意識した研究を行うことが可能です。
心理職として不可欠な法的知識や倫理についても理解を深められるよう工夫されています。
また、将来的に研究者として活躍することも考え、リサーチスキルなどの研究開発に必要な能力の育成にも力を入れています。
関西大学大学院心理学研究科心理臨床学専攻博士前期課程(修士課程)1年目の学費は
・入学金:130,000円(初年度のみ)
・1年間の授業料:1,000,000円
・校友会基本会費:10,000円(2年目から20,000円)
合計1,140,000円(入学金なしだと1,010,000円)となっています。
関西大学も学費が高い…。
でも、関西大学にも独自のもの含め、色々奨学金があるので見てみると良いかも。
貸与だけでなく給付もあるよ。
まとめ
今回お話しした内容をまとめてみましょう。
公認心理師の大学院を選ぶ5つのポイント
1.公認心理師のカリキュラムに対応しているか
2.自分が学びたいことが学べるか
3.どんな経歴の教員がいるか
4.過去の実績(就職率や就職先)
5.学費や場所など個人的な面
今回は公認心理師対応カリキュラムを実施しているおすすめ大学院10校をご紹介しましたが、ほかにも魅力的な大学院はたくさんあります…!
働きたい現場や理想の公認心理師像を軸に、自分にしっくり来る環境や教員が揃った大学院を選んでみてくださいね!
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