【産業分野】リワークで働く心理職ってどんな仕事をしているの?【職場や仕事内容を解説】

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心理職の働き方

今回の記事は、産業分野で働く心理職のAさんに執筆していただき、ブログ運営者の佐藤セイがブログのスタイルに合わせた編集を行っています。

産業分野で働く心理職のリアルな声をお楽しみください!

これから心理職としての就職を目指す学生の皆さんは、どんな領域に興味を持っているでしょうか?

現在、臨床心理士や公認心理師は幅広い分野で活躍しています。

主な領域としては、「教育」、「医療」、「司法」、「福祉」、「産業」などがあります。

みなさんもおそらく、将来のことを思い浮かべた際に、

教育分野でスクールカウンセラーとして活躍したいな!

司法分野に進んで、非行少年の支援がしたい

など、大まかな領域を決めている方が多いのではないでしょうか。

では、産業分野はいかがでしょうか?

少なくとも、私の周りで産業分野に就職した学生はほとんどいませんでした。

Aさん
Aさん

私も正直にいうと、ほとんど知識のないまま就職し、飛び込んだ世界でした。

他の分野に比べて、まだまだ地味な産業分野。しかし近年、労働や産業にかかわる心理職のニーズは高まっています。

そこで、この記事では産業分野に興味を持っている方に向けて、「リワーク」という制度を例に、産業分野で働く心理士の働き方について詳しく解説していきます。

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産業分野の心理職とは?職場と仕事内容を紹介

労働・産業分野の心理職の職場

労働・産業分野の心理職は次のような職場で働いています。

・企業内相談室

・企業内健康管理センター

・安全保健センター:安全・快適に働ける職場環境をつくる機関

・公立職業安定所(ハローワーク)

・障害者職業センター:障害を持つ方の就労をサポートする機関

日本臨床心理士資格認定協会「臨床心理士の職域」より(*1)
Aさん
Aさん

企業だけでなく、色々なところで産業分野の心理職は活躍しています!

労働・産業分野の心理職の仕事内容

労働・産業分野の臨床心理士や公認心理師は、どのような仕事を行うのでしょうか。

日本臨床心理士資格認定協会は、労働・産業分野での仕事内容を次のように説明しています。

職業生活の遂行のために、面接や職場内でのコンサルテーションなど、就業の相談では、職業への適性をめぐる問題等の心理的援助を行います。

日本臨床心理士資格認定協会「臨床心理士の職域」より(*1)

簡単に説明をすると、産業領域では、メンタルヘルスの問題が原因で就労が困難な人に対して援助を行います。

厚生労働省が令和3年に実施した労働安全衛生調査によると、1年間の間に1ヶ月以上休職した社員がいる企業(※規模500人以上の事業所)の割合は87でした。(*2)

また、うつ病は生涯のうち、約15人に1人が経験すると言われています(*3)

今の時代、誰もが、働く中でメンタルヘルス不調になり、仕事を休まざるを得ない状態になる可能性があるのです。

そのため、心の専門家である心理士は、働く人を支える上で重要な役割を担っています。

Aさん
Aさん

今回は、私が支援に携わってきた「リワーク」を例に

その概要を解説していきたいと思います。

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産業分野での具体的な働き方を「リワーク」から見てみよう

そもそも「リワーク」って?

リワークとは、return to workの略語です。精神疾患を原因として休職している労働者に対し、職場復帰に向けたリハビリを行うことを指します。復職支援と呼ばれることもあります。

リワークは、

・医療機関

・福祉施設

・企業

などで実施されていることが多く、職場復帰に向けたプログラムが組まれます。

日本うつ病リワーク協会は、リワークプログラムの概要を、以下のように説明しています。

プログラムに応じて決まった時間に施設へ通うことで会社へ通勤することを想定した訓練となります。

仕事に近い内容のオフィスワークや軽作業、復職後にうつ病を再発しないための疾病教育や認知行動療法などの心理療法が行われます。

また、初期には久しぶりの集団生活に慣れるための軽スポーツやレクレーションが行われることがあります。

プログラムの途中では、休職になった時の働き方や考え方を振り返ることで、休職に至った要因を確認するとともに復職した時に同じ状況(休職)にならないための準備もしていきます

日本うつ病リワーク協会「リワークプログラムとは」より(*4)

つまり、

・復職に向けた心と身体の準備

・再び休職しないための教育や治療

が同時に行われるのが「リワーク」ということです。

リワーク心理士/師の役割

では、リワーク心理士/師は具体的に、具体的にどんなことをしているのでしょうか?

ここでは、心理士/師の役割を「集団プログラム」、「個別カウンセリング」、「連絡調整」、「フォローアップ」の4つに大きく分けて説明をしていきます。

集団プログラム

リワークに通っている方々に対して集団プログラムを実施します。

集団プログラムでは、

・疾患や症状に関する自己理解

・認知行動療法

・ストレスマネジメント

・アサーショントレーニング

などといったテーマで行うことが多いです。

ストレスマネジメントは、ストレスとの付き合い方を学ぶこと

アサーショントレーニングは、自分も相手もOKな自己主張の方法を学ぶことです。

心理教育の講師やグループ活動のファシリテーターが心理士の主な役割です。

Aさん
Aさん

私は、

・気分障害や不安障害などに関する心理教育

・職場の場面を想定した認知再構成をグループでディスカッションする際のファシリテーション

などを担当していました。

個別カウンセリング

集団プログラムでは、いろいろな方に共通する内容を取り上げます。しかし、実はそれだけは不十分。

なぜなら、休職に至った背景は人それぞれだからです。それを補うためには、個別のカウンセリングを行うことが必要です。

個別カウンセリングでは、その方の状態に合わせて、生活リズムの調整職場復帰への具体的な目標や課題について話し合います。

復職に関わる人たちとの連絡調整

リワークでは、集団プログラムと個別カウンセリング以外にも、心理士が行う業務があります。

中でも、特に重要なのが連絡調整です。復職は本人と心理士だけで進められるものではありません。復職支援には、さまざまな人が関わっています。

・産業医

・主治医

・職場の上司

・人事

・家族

…などなど。

そのため、心理士が、本人と職場や家族をつなぐ役割を担うこともあります。

ときには、クライエントさんの会社にお電話をかけたり、直接訪問したり。また、ご家族にカウンセリングに同席していただくこともあります。

その際に行うことは…

・休職前の状態や職場環境のヒアリング

・クライエントさんのリワークの取り組み状況の報告

・復職の時期や復職後の仕事量や内容の相談

など。

Aさん
Aさん

この際、大事になってくるのが、分かりやすく説明すること!

相手は、心理学の専門知識を持っていない方がほとんどです。

専門用語を並べ立てただけでは、

何を言っているのだろう?

この心理士と話して意味があるのだろうか…?

と思われてしまいます。

他の領域にも言えることかもしれませんが、専門職としての意見を噛み砕いて説明することを意識できるといいですね。

また、最近では発達特性と職場環境のミスマッチにより不適応を起こして休職をせざるを得ない方も多くいらっしゃいます。そのため、WAISをはじめとする心理検査の知識やスキルを持っておくとベターです。

フォローアップ

実はリワークは復職がゴールではありません!復職をして、その後職場で健康に働き続けることが重要なのです。

そのため、人によってはフォローアップを必要とするケースもあります。

・再発はしていないか?

・リワークで習ったことを実際に職場で実践できているか?

定期的に継続面談を行い、不安なくお仕事を続けられるようにサポートをしていきます。

リワーク心理士/師のとある一日

ここで、リワークで働いていた私のとある一日をご紹介したいと思います。

リワークで働く心理士/師の1日
  • 8:45
    出社
  • 9:00
    全体ミーティング

    その日実施予定のプログラムの打ち合わせ。 担当をしているクライエントさんの状態を報告。

  • 10:00
    プログラム①「自己理解」

    パワーポイントを用いて、うつ病の症状について説明。自分の症状を振り返りながら、再発のサインを見つけるワークに取り組んでもらう。

  • 11:00
    電話ミーティング

    担当しているクライエントさんが所属する会社の担当の方と電話で打ち合わせ。復職の時期や復職後の業務についてヒアリングを行う。

  • 12:00
    昼食
  • 13:00
    カウンセリング①

    休職中の方との面談

  • 14:00
    面談記録の作成や事務仕事
  • 15:00
    情報提供書の作成

    復職を予定されている方の状態を所見にまとめる。主治医や産業医が心理士の意見を参考にすることもある。

  • 16:00
    ケース会議

    難しいケースや対応に困っているケースについて、心理士同士で意見交換をしたり、先輩心理士からアドバイスをもらったりする。

  • 17:00
    カウンセリング②

    復職後のフォローアップ面談

  • 18:00
    退勤

リワークに興味がある方向けのおすすめ資料

ここでは、リワークに関して、参考になる資料をご紹介します。

クライエントさんへの心理教育にも使える資料となっていますので、ぜひご活用ください。

こころの耳

まず、ご紹介したいのが「こころの耳」というサイトです。

こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト
働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」(厚生労働省サイト)です。働く方やそのご家族、職場のメンタルヘルス対策に取り組む事業者の方などに向けて、メンタルヘルスケアに関するさまざまな情報や相談窓口を提供しています。

「働く人へ」、「ご家族の方へ」、「事業者の方へ」、「部下を持つ人へ」、「支援する人へ」とセクションに分かれていて、短い動画で働く人のメンタルヘルスについて学ぶことができます。

うつ病リワークプログラムのはじめ方

次にご紹介するのは、「うつ病リワークプログラムのはじめ方」という本です。

医師、看護師、心理士、作業療法士らのチームがどのようにリワークプログラムを実施しているか事例を交えて紹介してくれています。

まとめ

Aさん
Aさん

ここまでの話をまとめてみましょう!

■産業分野では、心理士/師はメンタルヘルス不調で困っている労働者を支援する

■リワークとは、職場復帰のためのリハビリ

■リワーク心理士の役割

・集団プログラム

・個別カウンセリング

・連絡調整や心理検査、復職後のフォローアップなど

Aさん
Aさん

産業領域の心理職にも興味を持ってもらえると嬉しいです!!

とても勉強になりました!

Aさんありがとうございました!

佐藤セイ
佐藤セイ

ほかの領域の仕事については、こちらの記事からどうぞ。

引用文献

*1 日本臨床心理士資格認定協会「臨床心理士の領域」

*2 厚生労働省 令和3年 労働安全衛生調査(実態調査)

*3 厚生労働省 こころもメンテしよう「こころの病気について知る うつ病」

*4 日本うつ病リワーク協会「リワークプログラムとは」

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