公認心理師になるために大学に行ったあと、実務経験を積むBルートを選ぼうと思っている。どこでもいいから働けばOK?
大学院に行かずに、実務経験を積む「Bルート」や「Fルート」で公認心理師の受験資格を得たいなら、「プログラム施設」で実務経験を積む必要があります!
今回は
・プログラム施設の概要
・現時点で認定されているプログラム施設の種類
・プログラム施設で学ぶ方法
・大学院で学ぶコースと比較したときのメリット
についてお話しします。
プログラム施設とは?
受験資格における「プログラム施設」の位置づけ
公認心理師になるためには、「公認心理師法」に定められているいくつかの要件を満たす必要があります。特にプログラム施設に関連するのが、公認心理師の受験資格に関する「公認心理師法第7条2号」です。
学校教育法に基づく大学において心理学その他の公認心理師となるために必要な科目として文部科学省令・厚生労働省令で定めるものを修めて卒業した者その他その者に準ずるものとして文部科学省令・厚生労働省令で定める者であって、文部科学省令・厚生労働省令で定める施設において文部科学省令・厚生労働省令で定める期間以上第二条第一号から第三号までに掲げる行為の業務に従事したもの
e-GOV法令「平成二十七年法律第六十八号 公認心理師法」
法律の言い回しは難しいですが、この文章中の「文部科学省令・厚生労働省令で定める施設」がプログラム施設です。
プログラム施設の認定基準
プログラム施設に認定されるには、以下の9つの基準を満たす必要があります。
1 大学で習得した内容と合わせて「プログラムの到達目標」を達成できる内容となっている
※プログラムの到達目標:プログラムを通じて身につける知識や技術の目標
2 実務従事者(※実務経験を積もうとする人)の募集定員は2人以上とし、その募集は原則として公募で行われる
3 指導者が1人以上勤務し、適切な指導体制が整っている
4 指導者1人につき実務従事者は5人まで指導できる
5 実務従事者が実務・指導に触れる時間は720時間以上かつ240回以上。
6 実務従事者は、
・心理に関する支援を要する個人又は集団を対象とした心理に関する支援のケースを3例以上
・多職種と連携した業務
を経験する
7 実務従事者が従事するプログラムを行う施設の分野以外の2つ以上の分野の施設において、合計60時間以上の見学や研修を行うことが望ましい
8 標準的には3年間でプログラムを終えることが想定される
9 公認心理師となるために必要な到達目標の達成状況を評価できる体制が確保されていること
より詳しく知りたい方は、
現在認定されているプログラム施設9施設の紹介
ここからは、2024年4月28日現在認定されている9つのプログラム施設をご紹介します。
司法分野のプログラム施設
司法分野のプログラム施設は、以下の2施設です。
少年鑑別所や刑事施設で実務経験を積むには、まず公務員試験に合格して「心理技官(矯正心理専門職)」となる必要があります。無事に心理技官として採用された後の、「育成のための指導・研修」が実務経験とみなされるのです。
また、裁判所職員総合研修所及び家庭裁判所では、「家庭裁判所調査官補」として採用されたあと、研修や指導を受けることで、実務経験となります。
それぞれの合格倍率は
・心理技官は3~4倍
・家庭裁判所調査官補は7~8倍
公認心理師試験よりも難しい!!!
「心理技官」や「家裁調査官」を目指す人に対し、「公認心理師もとりたいならとれるよ~」という感じ。単に公認心理師になりたい人を受け入れる施設ではありません。
医療分野のプログラム施設
医療分野のプログラム施設は、以下の5施設です。
これらの施設では、心理療法や心理カウンセリングなど、さまざまな治療に心理師として関わることができます。
特に学校法人川崎学園では、川崎医療福祉大学大学院の授業を受けつつ勤務して、知識やスキルを伸ばしていくことが可能です。
医療分野は司法分野よりハードルが低そう。
選考も「書類選考」と「面接試験(個別 or 集団)」で、なじみのある形式のところが多いし。
司法分野よりもハードルは低いけれど、その分応募が多く、倍率は高くなることが予想されますね…。
あと、気を付けたいのが「待遇」です!
施設ごとに結構待遇が違うのでご注意ください!
・さっぽろ駅前クリニック:支給額192,800円+奨学金26,100円(4週6休制、週約40時間勤務)
・弘前愛成会病院:基本給144,000円+賞与年2回(基本給1か月分)(常勤採用)
・メンタルクリニック・ダダ:時給1300円(非常勤採用 8時間×週3日)
・学校法人川崎学園の2施設:月額90,000円(週3日、月90時間程度)※川崎医療福祉大学大学院で関係科目を受講する費用60万円×2年分が別途必要
まぁ、実務経験を積ませてくれる施設だから、給与が低めなのは仕方ないにせよ、
学校法人川崎学園のプログラム施設だと、120万円用意しないといけないのか…
120万円出すなら、普通に大学+大学院のAコースでいいんじゃないかって気もする。
お金はあるけど院試に落ちた!という方や、岡山近辺に住んでいる方/住み続けたい方にはニーズあり???
福祉分野のプログラム施設
福祉分野のプログラム施設は、以下の2つです。
- 「社会福祉法人 楡の会」(北海道)
- 「社会福祉法人 風と虹 筑後いずみ園」(福岡県)
これらの施設では、身体的または精神的な困難を抱えた子ども・大人が社会生活を送るための支援や、高齢者の心理ケアなど、さまざまな福祉支援活動に関わっていきます。
筑後いずみ園は、公認心理師のプログラムを実施しているというよりも、職員研修が結果として公認心理師プログラムの実務経験になっている…という感じです。
先ほどご紹介した「心理技官」や「家庭裁判所調査官」のパターン。
・楡の会:基本給160,000円+独自の奨学金制度(常勤採用 実働7時間45分 週休2日制)
・筑後いずみ園:基本給185,000円+夜勤手当・処遇改善手当・資格手当など=216,000円+賞与年3回(基本給約4.5か月)(常勤採用、変形労働制)※児童指導員として就職したときの例
プログラム施設で採用されるまでの手続きは?
それぞれのプログラム施設に連絡する
プログラム施設での実習を希望する場合、基本的には各施設に直接問い合わせます。
電話やメールでの問い合わせが必要な場合もあれば、ホームページの応募フォームからの応募、事前に問い合わせなくても書類を提出すればよい場合など、施設によってさまざまです。
しっかり確認しておきましょう。
各施設の情報を収集するとともに、可能であれば事前に見学をさせてもらうのがおすすめです。資料だけではわからない施設の雰囲気が感じられます。
また、自分のイメージとのギャップがないか確認しておくと、実務従事者として採用された後に「こんなハズじゃなかった!」と後悔するようなミスマッチが防げます。
事前に説明会を実施しているプログラム施設もあります。
Bルートでの受験資格取得を検討している方は、早めに情報を収集しておきましょう!
選考を受ける
Aルートの人たちが大学院に行っている間に、Bルートの私たちはプログラム施設に行く。
だったら学生の実習と同じようなものかな?
と思うかもしれませんが、プログラム施設に実務従事者として採用されると、1人の職員として勤務することになります。あくまでも外部からの実習生として扱われる学生とは違います。
実務従事者の採用プロセスも就職の採用試験とほとんど同じです。
・自己分析:自分の適性を理解する
・企業研究:それぞれのプログラム施設を知る
・選考対策:履歴書等の書き方をマスターする、面接練習を重ねる
など、実務従事者がやるべきことは一般的な就活生と変わらないね。
BルートやFルートは公認心理師資格をとること自体よりも、卒業後すぐに心理職としての経験を積みたい人/働きたい人に適したルートなのです。
プログラム施設で実務経験を積むメリット・デメリットとは?
プログラム施設のメリット
プログラム施設で実務経験を積むメリットとしては、
・現場経験を早く積める→実際の現場で求められる知識やスキルが高まる
・自己負担金がAルート等より抑えられる
といった点が挙げられます。
プログラム施設のデメリット
一方、プログラム施設に進むBルートやFルートのデメリットとしては、
・Aルート等に比べて必要とされる実務経験が長期間に及ぶため、途中で挫折する可能性がある
・経験を積む場所によっては専門的な研鑽が乏しい場合がある
といった点が挙げられます。
いまはプログラム施設が限られているから、選ぶのにも限界がある。でも、今後もっと増えたときには、自分に合った施設を選んで、デメリットをできるだけ軽減しておくのは大事。
まとめ
今回の内容をまとめてみましょう!
プログラム施設は9つの基準を満たし、認定された施設のこと。
2024年4月28日時点では
・司法分野:2施設
・医療分野:5施設
・福祉分野:2施設
計9施設あります。
プログラム施設で実務従事者となるには、就職活動と同じく書類選考や面接などによる採用試験を突破する必要があります。
大学院へ行くAルート等の人たちよりも早く現場経験を積めることや、負担する金額が抑えられることがメリットです。
自分自身のキャリアを視野に入れつつ、最適なプログラム施設を探し、そこで価値ある経験を積むことで、将来の心理師としての道を切り拓いていきましょう!
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