20代後半でスクールカウンセラーをされている方から、親面接に関するご質問をいただきました!
なお、私も30代前半なので多くの保護者の方より若輩です。かつ子どもはいません。
そのため、質問者さんと立場的には似ているのかなぁ…と思います。
私も親面談はとても苦手でしたし中断事例もたくさんあります…。
ただ、最近なんとなく「中断しなくなってきたな?」と思うようにもなりつつあります。
そんな私なりに取り組んでいることをお話しします。
スクールカウンセラーの親面談で取り組んでいること
とにかく「保護者」に寄り添う
スクールカウンセラーのところまでわざわざ足を運んでくれる保護者の方は、それだけで本当に素晴らしいと思います。
忙しい中、時間の都合をつけて、家庭の問題を外に洩らす抵抗感や「もしかしたら自分が悪いと言われるかもしれない」という不安も超えて、一生懸命やってきてくれたのだろうと感じます。
また、スクールカウンセラーに相談に来る保護者の方は「自分は子育てに失敗した」と感じていることも少なくありません。
まずはそんな保護者の気持ちに寄り添い、労い、「あなたは間違っていないですよ」と伝えることが大切なのかなぁと最近感じています。
実際、保護者の方の行動はそれほど間違っていないことが多いように思います。
むしろ「子どもを正しく導かなくては」と気負えば気負うほど、親子で苦しく不自然な関係へと進んでいるだけで。
特に中学生は導こうとすればするほど反発してややこしくなることもあるし…。
保護者の方の「心」を見つめる
自信をなくして弱っている保護者にどれだけ正しい助言をしても、「やっぱり自分が間違っていた」という気持ちを強めるように思います。
その助言の中身がどれだけ正しくても、「助言をする」というタイミングが間違っていると、それは攻撃にしかならない。
保護者の方は大人なので「社会性」が高く、表面的に笑顔を見せて話していることも多いですが、実際には傷つきを隠していたり、泣きたい気持ちを抑えていたりします。
この隠された気持ちが表に出てくるまでは変に助言するよりも傾聴した方がいいし、言葉を返すなら「今までとても頑張ってこられた」「ご両親がそういう接し方になるのは自然なこと」と肯定するのが良いように感じます。
たぶん、保護者の方に助言してくれる人ってたくさんいると思うんです。学校の先生、保護者の方のご両親、ご友人など。
でも、保護者の方に「よく頑張ったね」と労える人は多くないような気がします。誰だって相談されれば、「子どもの問題を解決するのが優しさだ」と感じるので、それは無理のないことなんですけど。
そして、保護者の方も「子どもの方が苦しんでいるから」と自分の傷つきを見ないようにしているけれど。
でも、やっぱり自分の心の傷を無視されているのはしんどいです。積もり積もったしんどさは結局子どもに向いてしまうこともあるし。
だから、まずは保護者の方の「頑張り」や「傷つき」をしっかり知って、共感して、肯定するのが大事だなぁと思うのです。
笑顔or涙を見てから助言する
ずっと傾聴して肯定していると、ふとしたタイミングで保護者の方の肩の力が抜けて吹き出したり、あるいはポロポロと涙を流されたりします。
たぶん、緊張の糸が解けたのかな?と思います。
そういう姿を見てから助言した方が、保護者の方の納得感が高いような気がします。
また、私自身も保護者が抱えている色々な事情を知った上で助言できるので、保護者の方にハードルが高すぎない助言を行えるようにも思います。
もちろん、面談終盤まで固く緊張していたり、「具体的にどうすればいいか教えてください!」と迫ってくる保護者の方もいます。
私も全ての保護者の方にうまく対応できている訳ではありませぬ…。
スクールカウンセラーの親面談における若さと子育て未経験のコンプレックス対処法
まずは基本的な保護者対応テクニックを押さえておこう
保護者の方とのカウンセリングをする/しない以前に「失礼でない」対応をしっかり身につけておくことが大事です。
そんなときに「保護者との良い関係を積極的につくるカウンセリング」はおすすめ。
教師向けではあるものの、というより教師向けだからこそ、社会的な・開かれた対応が示されているのが魅力です。保護者のタイプ別の対応法なども載っていて参考になります。
自分のなかにまったく武器がない状態で保護者と向き合うより、ほんのちょっぴり心に余裕が生まれます。
A4サイズで持ち運びに不便&電車で読みづらいのが玉に瑕。
もっと小さいバージョン出てほしい…!!
低い位置に立てるので実はメリット説
私は「子育てをしたことがない」ということ自体が、スクールカウンセラーの親面談では活かせるんじゃないかなぁと最近感じています。
というのも、スクールカウンセラーってどれだけ若かろうが「スクールカウンセラー」という専門家感があるのです。保護者の方も「佐藤先生」なんて呼んでくださるし…。
その専門家感は「頼りがい」を感じさせるのかもしれませんが、一方で「こんなこと言ったら否定されるんじゃないか」「自分の知識のなさを笑われるんじゃないか」という怖さも感じると思います。
その状態では何でも素直に話すことは抵抗があるかもしれません。ちょっと格好つけてしまうというか。
大学院で教授や先輩の前でケースカンファするときの気分かも???
あるいは学会のポスター発表や口頭発表…?
でも、「年齢」や「子育て」については保護者の方が優位に立てる訳です。これって保護者とのパワーバランスを少し調整するのに役立つように思います。
信田さよ子先生の「カウンセラーは何を見ているか」という本にも、できるだけクライエントより低い位置に立つ…というようなことが書かれていたと思います。(うろ覚えで申し訳ない)
子育て経験のなさや若さは、保護者の方より低い位置に立って、パワーバランスをちょうど良くするのに効果的かもしれません。
お金を貰って行うカウンセリングなら、それだけでクライエント側が少し上に立ちますが、スクールカウンセラーはお金も直接受け取っていないので、なかなか低くなれません。
その点、我々は「若輩者です」「子育てもしていないです」と、堂々と(?)頭を下げてカウンセリングが出来るのではないでしょうか。
まぁ、あんまりにも頼りないのも良くないので、バランスは大事ですが。
そもそも保護者の方と本当に通じ合えていれば問題にならない、かも
保護者の方が「先生って何歳ですか」「子どもいらっしゃいます?」と質問してきたときって、保護者の方と出会ってすぐのときか、私が保護者の方を何らかの形で傷つけた後だなぁ…と今振り返ると思います。
専門知識をもとに「〇〇しましょう!」と非現実的な助言(指示)を伝えてしまったり、「それは良くないですよ」と保護者の方を否定してしまったり…今思うと本当に申し訳なかったです。
そうやって傷つけたから、保護者の方に「まだまだ若造のくせに偉そうに言うな!」「どうせ子育てもしたことないくせに!現実の子育ても知らないくせに!」という不快感や怒りを生み、年齢や子育ての質問で反撃される結果になったんだろうと思います。
でも、最近はあんまり質問されなくなったような気がしています。
心の中では「なんか若いな?大丈夫か?」「こいつ結婚してるんか?」と値踏みされているのかもしれないけれど。
まぁ、それは仕方ない。保護者にもアセスメントの権利はありますもの。
自分自身の傷つきも否定してはいけない
保護者との面談がやたらとうまくいかないのは、自分自身が抱える傷つきも影響しているのかもしれません。
私は自分の親との関係にちゃんと向き合えずにいた結果、保護者の方に自分の親を重ね、「子どものことをもっと考えてよ!」と自分の親にぶつけたい気持ちを保護者の方にぶつけてしまい、中断する…ということが続いていました。
教育分析を受けて、ある程度自分自身の傷に整理をつけていくうちに、保護者の努力や傷つきを冷静に見つめられるようになりました。
自分の問題と、保護者と子どもの問題を分けられるようになったのかな、と思います。
全く根拠はありませんが、質問者さんにも、もしかしたらそういう部分があるのかもしれません。
まぁ、そうじゃなくても「否定されずに話を聴いてもらえる心地よさ」を体験できると、保護者の方にもそうしてあげたくなります。
焦って「保護者の方に助言しないと!」と思わなくなる…かも。
教育分析おすすめです。
終わりに
神田橋先生の本で「子供は親の教えるようにはならず、親のようになる」という言葉がありました。
これは治療論でもあって、カウンセラーが保護者にしたことを、保護者は子どもにする…ということだそうです。
つまり、スクールカウンセラーが「こうしたら」「ああしたら」と助言すると、保護者も子どもにそういう助言を繰り返すということ。
逆に言えば、スクールカウンセラーが保護者の言葉を傾聴・肯定すれば、保護者も子どもにそういう態度で関われる可能性が高くなるということ。
保護者の先にいる子どもを見据えながら、保護者と子どもがどう関わってほしいかを考えた上で、スクールカウンセラーがその姿勢を取り続ければ、年齢とか子育て経験とか細かい部分はそんなに関係ないのかもしれない。
ただ、人と人との「関わり」の問題でしかないのかもしれない。
そんなことを考えています。
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