中学校・高校に勤務するスクールカウンセラーが知っておくべき「うつ病」

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SCの知識や技術

スクールカウンセラーには様々な相談が持ち込まれます。

特に思春期の子どもは心が大きく揺れ動く時期であるため、医療との連携が必要になるようなケースも少なくありません。

そのため、精神疾患を直接支援はできなくても「これは医療につなげる必要がある」と判断できる程度の知識は持ち合わせておく必要があります。

今回は精神疾患第1弾として、中学校・高校に勤務するスクールカウンセラーが知っておくべき「うつ病」をご紹介します。

佐藤セイ
佐藤セイ

私が中学校・高校で勤務している経験をふまえてお話しします。

いずれ小学生(児童期)の話もできたらいいなぁ…

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中学校や高校でスクールカウンセラーが出会う「うつ病」

中学生や高校生は「これまでの自分」ではいられないという場面がたくさんあります。

例えば

・学業や部活で「より良い成績」を求められる

・小学校と異なり、先生-生徒、先輩-後輩などの「役割」を大切にしなければならない

・友人関係でその場を盛り上げる「キャラ」を演じることを求められる    など

「今の自分ではいけない」というメッセージを受け取る機会がうんと増えるのです。

そのため、「このままじゃダメだ!」と背伸びして頑張っている子が少なくありません。

しかし、「どれだけ背伸びしても目標に届かない」という時に「抑うつ状態」に陥ってしまうケースが見られます。

本人・家族・先生方と連携してストレスの要因を取り除くだけで解消する一時的な「抑うつ状態」もありますが、強い身体症状や妄想を呈するなど医療の力が必要な「うつ病」の状態もあります。

スクールカウンセラーはこのような「うつ病」を正しく理解し、必要に応じて医療につなげるよう努めなければなりません。

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そもそもうつ病とは?

うつ病の診断基準

日本でもよく用いられているアメリカ精神医学会の診断基準「DSM-Ⅴ」に基づく、うつ病の診断基準では、以下のA~Cを全て満たした状態が「うつ病」とされています。

A: 以下の症状のうち5つ(またはそれ以上)が同一の2週間に存在し、病前の機能からの変化を起こしている。これらの症状のうち少なくとも1つは、「1.抑うつ気分」または「2.興味または喜びの喪失」である。※明らかに身体疾患による症状は含まない。

1.抑うつ気分

抑うつ気分はほぼ毎日、1日中続いていることが本人の言葉や他者の観察で分かる。※小児や青年ではいらいらした気分もありうる。

2.興味・喜びの喪失

ほぼ 1日中のすべて(またはほぼすべて)の活動における興味・喜びが著しく減退した状態が毎日続いていることが、本人の言葉や他者の観察から分かる。

3. 体重や食欲の変化

ダイエットをしているわけではないのに1ヶ月に5%以上の体重変化が見られる。または、ほとんど毎日の食欲の減退または増加が見られる。

4. 睡眠の問題

ほとんど毎日、「眠れない」「寝付けない」といった不眠症状や、「眠気が強くて起きられない」などの過眠症状などの睡眠に関する問題が怒っている。

5. 精神運動性の焦燥や制止

ほとんど毎日の精神運動性の焦燥または制止が他者からも観察できる

・精神運動性の焦燥:じっとできずに動き回る、座っていられないなど

・精神運動性の制止:話すのが遅い、動作が遅い、言葉が出ないなど

6. 易疲労感や気力減退

ほとんど毎日疲れやすさや気力の減退を感じる。

7. 無価値感や罪責感

「自分は無価値だ」「自分は悪い人間だ」「自分は犯罪者だ」などの強く、時には妄想的な罪責感がほとんど毎日存在する。

8.思考力・集中力減退、決断困難

考えがまとまらない、物事に集中できない、決断することに難しさを感じるなどの症状がほとんど毎日存在する。

9.自殺念慮、自殺企図

死について何度も考える、自殺のことを何度も考える、自殺を計画する、実際に行動に移すなどの症状がある

B:症状が苦痛を引き起こしている、または社会生活や仕事などでの障害となっている C:物質や他の病気による精神的な影響によるものではない

C:物質や他の病気による精神的な影響によるものではない

参考資料

飯田橋東口内科心療内科診療所「うつ病や躁病などの気分の障害と適応障害」

一般社団法人日本健康倶楽部「第3部普及啓発用教材;2.うつ病とはどんな病気か」

中学生・高校生のうつ病の特徴

中学生や高校生がうつ病になった際も、基本的な症状は先ほど「うつ病の診断基準」でご紹介した内容と同じです。

ただし、中学生や高校生など思春期にあたる子どもたちは

・イライラ感

・身体症状

・授業中の態度が悪くなる

・成績不振

・友達からの孤立

・不登校

といった「身体」や「行動」で症状を示す傾向が見られます。

また、子どものうつ病はうつ病単独で出現するよりも、

・行為障害

・注意欠陥多動性障害(AD/HD)

・不安障害

・摂食障害

などに合併して出現することが多いとされています。

参考資料

なんばながたメンタルクリニック「B.思春期(青年期)のうつ病(大うつ病性障害)」

傳田健三「子どものうつ病再考」

中学生・高校生のうつ病の支援に役立つ資料

厚生労働省「うつ病の認知療法・認知行動療法治療者用マニュアル」

厚生労働省「うつ病の認知療法・認知行動療法治療者用マニュアル」は、慶應義塾大学認知行動療法研究会が編集した、認知療法・認知行動療法に基づくうつ病治療のマニュアルです。

全16~20回の継続した面接が求められるため、スクールカウンセリングの現場で用いることはあまり現実的ではありませんが、スクールカウンセラーがうつ病のメカニズムや治療に必要なことを理解し、本人やご家族に説明するための最低限の知識を習得できます。

佐藤セイ
佐藤セイ

厚生労働省のHPには「うつ病」以外にも「強迫性障害」「社交不安障害」「パニック障害」「PTSD」の認知行動療法マニュアルがあります。

指導者なしに実践することは推奨されていませんが、それぞれの疾患の知識や治療の流れを知るのには大変便利です!

心の健康
心の健康について紹介しています。

簡易抑うつ症状尺度(QID-S)

簡易抑うつ症状尺度(QID-S)は、DSM-Ⅳの大うつ病の診断基準に対応している自己記入式の評価尺度です。文章もそこまで難しいものではないため、高校生であれば一人で記入できそうです。

中学生には漢字や言い回しが難しい場合があります。必要に応じて文章の意味を説明したり、スクールカウンセラーが聴き取りながら評価したりする必要があるかもしれません。

精神科医 松崎朝樹の精神医学

精神科医の松崎先生が様々な精神疾患や治療について、分かりやすい言葉とシンプル&かわいいイラストで解説してくださっているYouTubeチャンネルです。

佐藤セイ
佐藤セイ

視聴するだけで精神医学をざっくり網羅できておすすめ!

いじめや自殺、子どもの発達など幅広いテーマが扱われているので気になるものから見てみましょう!

「死ぬくらいなら会社辞めれば」ができない理由(ワケ)

中学生・高校生のうつ病理解に適していないと思われるかもしれませんが、学業や部活動で追い詰められても逃げ場がない子供たちは、この本に描かれている「ブラック企業を辞められない大人」と同じような状態なんじゃないかなと感じています。

佐藤セイ
佐藤セイ

会社は経済的・心理的ハードルさえ超えれば自分の判断で「転職」ができますが、学校はなかなか選べないのも現実です。

逃げ場のない子どもたちをどう救うかは私たち大人が考え続けていかなければならないなぁ…と思います。

まとめ

ここまで、中学校・高校のスクールカウンセラーが知っておくべき

・うつ病の診断基準

・中学生や高校生のうつ病の特徴

・うつ病の支援に役立つ資料

をご紹介しました。

直接的にうつ病の治療をする機会は少ないと思いますが、スクールカウンセラーは生徒や保護者にとっての医療への入口になる存在ですから精神医学の知識は絶対に必要です。

佐藤セイ
佐藤セイ

診断はできませんが、「もしかしてうつ病かな?」と疑える程度には学んでおきましょう!

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