平成7年にスクールカウンセラー制度が始まってから、多くの学校にスクールカウンセラーが配置されるようになりました。
しかし、週に1~2回程度しか学校に来ないこともあって、
スクールカウンセラーって何をしているの?
という疑問の声はいまだによく聞かれます。
「スクールカウンセラーになりたい」という人でも、スクールカウンセラーが学校でどんな役割を担っているか分からない部分もあるかもしれません。
そこで、この記事ではスクールカウンセラーを目指す人やスクールカウンセラーに興味を持っている人に向けて、基本的な「スクールカウンセラーの役割」について詳しく解説します。
また、私自身がスクールカウンセラーの役割を果たすために心掛けていることもお話ししますので、ぜひ合わせてご覧ください。
スクールカウンセラーの役割【基本編】
児童・生徒からの相談対応
スクールカウンセラーの代表的な仕事と言えば、「児童・生徒からの相談」を受けること。
相談内容は実にさまざま。
・人間関係(「友達ができない」「親との関係が悪い」など)
・学校生活について(「学校に行きたくない」「いじめられている」など)
・勉強について(「授業が分からない」「宿題が終わらない」など)
・発達の特性(「周りの音が気になる」「じっと座っていられない」など)
・精神の不調(「ご飯が食べられない」「臭いと思われている気がする」など)
・性の悩み(「自分の性に違和感がある」など)
…などなど。
これらの悩みに対し、ただ話を聴く時間を大切にすることもあれば、児童や生徒の了解を得ながら保護者や先生に相談内容を共有し、適切な支援を受けられるよう積極的に働きかけることもあります。
幅広い相談に1人で対応するのはとても大変…。
自分の知識を高めると共に、教育相談や保健室の先生に頼ったり、紹介できる医療機関を知ったり、色々な工夫が必要です。
児童・生徒のアセスメント
アセスメント(assessment)とは「評価」や「査定」という意味の英単語です。
日本臨床心理士資格認定協会は、アセスメント(臨床心理査定)について
“種々の心理テストや観察面接を通じて、個々人の独自性、個別性の固有な特徴や問題点の所在を明らかにすること”、そして“心の問題で悩む人々をどのような方法で援助するのが望ましいか明らかにしようとする”こと
だと示しています。
少し難しい文章ですが、
「悩んでいる人を『〇〇障害』や『××病』などのラベルで理解したつもりになるのではなく、その人がどうやって生きてきたか、どんな特徴を持っており、どうして苦しんでいるのかを十分に知った上で、その人にぴったりの援助を見つけること」
がアセスメントだと言えるでしょう。
もちろんスクールカウンセラーも児童や生徒のアセスメントを行います。
児童や生徒の相談に耳を傾けている間も常にアセスメントをしていますし、必要があれば心理検査や授業場面の観察なども行います。
また、児童や生徒が外部の専門機関(医療機関や療育機関など)で受けた検査の結果を読み取り、保護者や先生に分かりやすく説明することも求められます。
「発達検査や知能検査を受けた子の結果を見せられ、「どんな特徴があるんでしょう?」「どう対応すればいいでしょう?」と保護者や先生から質問を受けることはとても多いです。 新版K式や田中ビネー、WISCやWAISについて最低限の知識は必須!
保護者や先生からの相談対応
保護者対応
スクールカウンセラーは、保護者の方からの相談も受けます。
例えば、不登校状態の子どもを前にすると、保護者の方は「学校に行くよう言った方がいいのか、でも無理に行かせてはいけないというし、どうしたら…」と強い葛藤と不安に苛まれます。
その結果、保護者も気持ちが沈んでしまったり、逆に怒りが溢れて子どもに辛く当たったりと、感情が不安定になり、子どもを支えるどころではなくなってしまいます。
そこで、スクールカウンセラーは保護者の気持ちに寄り添い、子どもと落ち着いて向き合えるようサポートします。
また、心理学的な知識や活用できるサービス・支援団体の情報を提供し、保護者が抱え込まない環境づくりにも取り組みます。
先生対応
先生から「この子にどう対応したらいいだろう」「こんなことがあったんだけど…」といった相談が持ち込まれることもあります。
注意したいのは、先生にも気持ちがあり、クラスの児童・生徒は特別に思い入れがあるということです。長い時間見守ってきた子どものことだから、本当は「自分が分かりたい」と思っているのに、カウンセラーに相談して「この子は〇〇な子ですね」とぱぱっと答えられてしまうと、どこか面白くない気持ちになってしまうことも当然あります。
先生のそういう葛藤にも寄り添いつつ、協力しながら支援する体制を整えることが必要です。
なお、スクールカウンセラーはあくまで「学校に通う児童・生徒」のことが中心なので、保護者や先生の個人的な悩みについては別の機関をご紹介しています。
研修などの実施
個人的なイメージなのですが、カウンセラーは1対1で話を聴くのは得意でも、大人数の前で話すのは苦手なのではないでしょうか。
しかし、スクールカウンセラーは研修や授業を実施しなければならないことがあります。
この場合は、「悩みを抱えないための予防策」や「心に関する正しい知識」を広く伝えていくことになります。
例えば、
・ストレスに対処する方法
・友達を作るためにできること
・性別って男と女しかないの?
など、「どんな人でも知っておいて損はない」という一般化された内容にしていきます。
内容を決めるのも難しいし、何より話すのが緊張する…
でも、いつもは1時間で1人しか支援できないけれど、研修なら1時間で何十人にも働きかけられるので、やりがいはあります。
緊急時の対応
児童や生徒の命に関わるような、事件・事故・災害などが発生した場合、学校では「緊急支援チーム」が設置され、スクールカウンセラーは心の専門家としての役割を担うことが求められます。また、外部からカウンセラーを派遣してもらうこともあります。
緊急時には、当事者はもちろん、ニュースや噂を見聞きした児童・生徒・保護者も不安定になるほか、対応を続ける先生にも大きなストレスがかかります。
広い視野を持ちながら、必要なところに迅速かつ丁寧に対応を届ける目が必要です。
スクールカウンセラーの役割【番外編】
ここからは私が思うスクールカウンセラーの役割(?)をお話しします。
暇そうにしていること
忙しそうな人に相談するのは困難です。
しかし、学校は先生も生徒もバタバタと常にせわしない場所。誰かに相談したくても「相談できる人がいない」「相談なんて迷惑になる…」と思ってしまう人もたくさんいます。
そのため、スクールカウンセラーは暇そうにしているのがおすすめ。
暇そうにぼんやり外でも眺めていれば、「これ手伝って」と声をかけてもらったり、「ちょっと聴いてくださいよ」と思いがけない人から悩みを相談されたりします。
ただし、あんまりにも暇をアピールしていると、管理職の先生からあらぬ誤解を受けるので気を付けて。
外の人でいること
スクールカウンセラーは、半分は学校の一員、もう半分は外の人…というイメージです。
半分は外の人だから「この話をしたら先生に伝わってしまうのでは」など誤解され、相談しづらい雰囲気になるのを軽減できているのかな…と思います。
また、学校の状況を客観的に見られるのも、外の人ならでは。
だからと言って、先生に何も話さないなどはNG。外にいるけど「協力」の姿勢はキープ。
ただ、これは私が非常勤だからかもしれません。常勤のスクールカウンセラーさんだと違ったイメージで働いておられるかも。
スクールカウンセラーおすすめ本
私がスクールカウンセラーをする上で日々参考にしている本をご紹介します。
スクールカウンセラーの第一歩
シンプルで読みやすい中に「スクールカウンセラー」として配属されたその日から役立つ内容が詰まっています。
「スクールカウンセラーになれたけど何から始めたらいいの!」と困惑している方におすすめ。
初日に挨拶すべき人や見ておくべきものなど、具体的な動きをリアルにイメージできます。
学校が求めるスクールカウンセラー アセスメントとコンサルテーションを中心に
先ほどの「スクールカウンセラーの第一歩」でやるべきことを理解して、さらに質を高めた働きを目指すなら「学校が求めるスクールカウンセラー」がおすすめ。
スクールカウンセラーとしての経験を重ねた方の失敗談なども掲載されていて、実践的な知識が学べます。
まとめ
ここまでの話をまとめてみましょう!
■スクールカウンセラーの役割【基本編】
・児童・生徒からの相談対応
・児童・生徒のアセスメント
・保護者や先生からの相談対応
・研修などの実施
・緊急時の対応
■スクールカウンセラーの役割【番外編】
・暇そうにしていること
・外の人でいること
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また、スクールカウンセラー制度が始まった1995年から現在までスクールカウンセラーとして活動されてきた半田一郎さんによる「スクールカウンセラーの歴史」の記事もおすすめ。
国や学校がスクールカウンセラーに何を求めてきたか、そして、そのニーズにしっかり応えることが雇用の安定にもつながっていることがよく分かります。
スクールカウンセラーになりたい方は、ぜひこちらの記事もご参照ください。
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